UnaBizによる取締役会へのインタビュー:ピエール・シェイロン(Pierre Cheyron)氏

ピエール・シェイロン(Pierre Cheyron)氏はENGIE東南アジアの元CEOで、東南アジアにおけるスマートシティの現状についてUnaBizと意見を共有しています。

ENGIEは、ENGIE Factoryのようなプログラムや、ENGIEの新規事業のような資金調達部門のあるスタートアップ企業を強力に支持している企業です。この点について詳しく教えていただけますか?

はい、その通りです。私たちENGIEは、特にここ3~4年間、選んだスタートアップ企業に多額の投資を行って提携関係を築くことで、自社コアビジネスにおける優先事項に注力していたと思います。スマートシティにおいては、都市がよりスマートで効率的になり、より持続可能な都市になるよう支援を行うことが、ENGIEのコア戦略です。

Sigfoxのような革新企業も支援していますが、スマートシティのアプリケーションにおける0Gの役割は何だと思いますか?

IoTや都市のデジタル化を大規模に行う場合は、適切でコスト効率の良いIoTソリューションが必要で、それは都市をよりスマートで持続可能なものにする上で絶対欠かせない要素になります。また、0Gソリューションは大きな可能性を秘め、大規模IoT開発の状況を考慮すると、最適なソリューションだと思っています。Sigfoxと提携しているのはこのためで、私たちにとって必要不可欠なパートナーだからこそ、UnaBizとも提携しているのです。

アジアでは大規模なIoTが実現していると思いますか?

スマート検針、スマートユーティリティに向けた大規模開発において、UnaBizは日本のガス検針に関してニチガスと重要な契約を締結しましたが、0G技術をIoTソリューションに応用して、たとえば、シンガポールにある病院との刺激的なプロジェクトでUnaBizと協働して成果を出した施設管理などの従来型のサービスを改善する機会もたくさんあると思っています。

Massive IoT(大量IoT)を推進する上で何が重要だと思いますか?

私が重要だと考えていることは、IoTに安価なネットワークを構築することだけでなく、エコシステムやソリューション全体についても考える必要があるということです。これは、病院、ガス会社、水道会社、物流会社に関係なく、あらゆる種類のお客様がこの種の技術を必要としているからです。しかし、それぞれのお客様が必要としているものはそれぞれ異なっており、お客様独自の機器、センサー、そしてエンドツーエンドのソリューション全体を統合する必要があり、その点が本当に重要なことだと思っています。そのため、基本的なレイヤーである0G の上に構築するものの方がはるかに重要になります。

IoTという言葉が流行っており、IoTを取り扱っている企業は数多くあります。UnaBizが他社とは違う点は何ですか?UnaBizが正しく行ったことは何でしたか?

その通りです。デジタル化ではここ10年近くIoTという言葉が流行り、多くの企業がIoTソリューション、IoTネットワーク、IoT機器、IoTアプリケーションなどを実施してきましたが、実際の導入やビジネス上での成功状況を見てみると、持続可能なビジネスモデルにした組織はほんの一握りです。また、特にスマートシティにおける基本レイヤーはデータを収集することですが、このデータを収集するだけでなく、集約してエンドユーザーが使えるデータとして提示できるエンドツーエンドのソリューションが必要なのです。それがUnaBizが数多くあるIoT企業と差別化できている点だと思います。UnaBizは接続だけを純粋に提供している事業者ではありません。UnaBizはエンドツーエンドの統合、ソフトウェア設計、機器設計、そしてそれだけにはとどまらず、機器の製造を産業化する上で必要なスキルをさらに開発しました。チェーン全体について考えをめぐらせることで、そのようなソリューションを検討できるのです。

ヘンリーにはどのような印象を持ちましたか?

ヘンリーのことを知ったのは確か2年前です。その当時は知り合いではありませんでしたが、シンガポールのフランス人コミュニティでは彼はよく知られている人物だったので、名前と性格については耳にしていました。私は彼の、時にあふれ出すことがある彼の意欲、エネルギー、力強さに好印象を持ったと思います。このような姿勢は新規事業を立ち上げる際にも必要なもので、彼は、熱意と多くのエネルギーで人々を導く人です。更にこの2年で彼はかなり成長したと思います。彼と彼のビジョン、そして強力な組織構築力のおかげで、多様性に富んだチームを作り上げていると思います。この種のベンチャー企業にとって優れたリーダーだと思います。

UnaBiz Board of Advisors and Directors quarterly meeting 2019
UnaBiz Board of Advisors and Directors quarterly meeting 2019

UnaBizのようなIoTスタートアップ企業と一緒に働くのはどんな感じですか?

正直に言うと、スタートアップ企業の経営に携わったのは初めての経験でした。元々、IoTの技術に関して本当に関心があったのです。繰り返しになりますが、特に都市部でENGIEの戦略を実行する上でIoTの技術は絶対に必要だと信じていたからです。取締役会に加わったとき、会社はまだ軌道に乗れていない状況でしたが、会社には明確な方向性だけでなく、創設者によるビジョンもありました。創設者は非常に意欲的で新たなエネルギーを生み出してくれ、押しは強いけれども自分たちの戦略は正しいと固く信じていました。だからこそ彼らが信じた戦略を実行に移す強力な組織を構築できたのだと思います。当時、接続を越えてバリューチェーン全体を目指すUnaBizの多角化戦略には恐らく反対派が社内外にいたと思いますが、強い意志を持ってビジョンにこだわることができたからこそ、組織をその方向に向かわせることができたと思います。

UnaBiz取締役会のメンバーとして一番楽しみにしていたことは何ですか?

私がありがたく思っていることは、彼らは会社に対して強力なビジョンと強い意欲、そして戦略的な見解を持っていたことに加え、私たちや多くの取締役会メンバーのような経験豊富な人物に実際耳を傾け、熱心に話を聞いてくれたことです。取締役会は経験豊富で多様性に富んだ人物で構成されていた取締役会だったからこそ、創設者に多くの知恵とアドバイスをもたらすことができたと思います。若く、活動的で明るく、意思を強く持つ2人の創設者と、さまざまな国籍と経験を持った人物で構成される取締役会の融合を経験できたことはすばらしいことであり、とても楽しませてもらいました。UnaBizがいよいよ飛躍するタイミングでこの取締役会にお別れしなければならないのは少し残念です。

シェイロン氏は、アジア企業とヨーロッパ企業が東南アジアで実施した数多くの取り組みと提携事業を目の当たりにしてきました。UnaBizの多文化アイデンティティがどのように、チームと事業を現在の姿へと形成していったと思いますか?

非常に面白い点です。東南アジアにある他のスタートアップ企業に目を向けてみると、生粋のアジア人か、アジアにいる西洋人、ヨーロッパ人、またはアメリカ人によって創設され、ヨーロッパ人で固められたチームを構築していることが多いです。UnaBizでは、経営チームとUnaBizのコアチームレベルでこのような人員構成が見られますが、シンガポール人とヨーロッパ人、特にフランス人と文化的に融合しています。フランス人とアジア人の間で形成されたこの二重文化は、多くの文化、価値をもたらしたと思います。いずれの創設者とも2つの文化、価値観を持っていますが、チームにはアジアやヨーロッパのさまざまな国の出身者がいます。このような環境は、東南アジアの市場とアジアにルーツのあるクライアントのニーズを理解するだけでなく、フランスの技術であるSigfoxのような技術を取り入れる上でも役に立っていると思います。また、このような環境によって、UnaBizがアジア以外の地域に進出しやすくこともあるでしょう。

UnaBizが次に向かうべきところはどこだと思いますか?

UnaBizは言うまでもなく、シンガポールと台湾で創設して成功しており、最近では日本でも成功を収めています。日本での案件は、UnaBizが国際企業として発展する上で極めて重要だと思います。UnaBizは日本で実施した案件のようなエンドツーエンドのIoTソリューションで商業上の成功を実証できる唯一の企業であることから、アジア以外でも勢いがついてきていると思います。このモデルはアジア以外の国々に持ち込むことが可能で、その点を考慮すると、ヨーロッパ文化、UnaBiz創設者が持つフランス文化、そしてアジア圏以外の国々への将来の拡大が可能だと思います。

フランスに戻ると伺っています。16年ぶりに東南アジアを離れることについてどう思いますか?

東南アジアでの16年間はとても特別な時間になりました。長年過ごした東南アジアを離れた後はパリに帰国して、9月1日からENGIE本社で新しい仕事を始めるのですが、これは簡単な決断ではありませんでした。ただ、人生においてこのような決断が必要なときもあるのです。言うまでもありませんが、東南アジアの活気にあふれる環境が恋しくなると思います。UnaBizがいよいよ飛躍するタイミングで離れるので、特にUnaBizチームの力強さは一生忘れないと思います。

UnaBizのチームに何か言いたいことは?

4年前にUnaBizを利用したとき、そして2年程前に参画したときのUnaBizはまだ成長中で、少し不安定な若い女性のようでしたが、今では十分に成長した青年のようになり、世界を制覇する準備が整ったと思います。アドバイスするのであれば、これまで歩んできた道をそのまま歩み続け、技術と対象地域の両面における明確な戦略に集中し続けて欲しいということです。ダイナミズムや会社特有の多文化融合を継続、維持し、時には白髪の賢い取締役会メンバーに耳を傾け続けていると、たくさんの機会に恵まれると思います。前進あるのみです。成功が証明されている戦略を徹底し、その戦略を再現してアジア以外の国へと拡大してください。UnaBizの経営陣はこのような将来像をすでに描いています。私がパリにいてもENGIEは引き続きUnaBizの株主なので、UnaBizの状況を見届けることをとても楽しみにしています。近い将来、いつかUnaBizのシンボルをヨーロッパで見られることを願っています。その際にはパリからできる限りの支援をさせていただきます。繰り返しになりますが、IoTの専門家ではない私を取締役会に温かく迎え入れ、耳を傾けていただき本当にありがとうございました。UnaBizからは数多くのことを学びました。成功への道のりを歩み続けてくれることを祈っています。

フィリップにはどのような印象を持ちましたか?

フィリップはどう考えても、ヘンリーが持ち合わせていない部分を上手に補っていると思います。それはフィリップが優れた技術者であるからだけではなく、技術を語る前にわかりやすい言葉を使って投資家やクライアントなどに対して説明できるからです。だからこそ、UnaBizにおける技術の要求と進捗、そして開発を正しい方向に推進できるだけでなく、それを市場に関連付け、IoTについて何も知らない私のような人物にも提示できるのです。フィリップが持つ技術への情熱と、ヘンリーが持つビジネス主義、起業家精神としての意欲が、UnaBizを成功に導く上で最適な組み合わせだと思います。