スマート検針の活用事例:ニチガススマートガス検針器
ニチガス、UnaBizとSORACOMと共に170万台のガスメーターを接続
日本のエネルギー市場は20年前以上に規制緩和されました。しかし、企業の保護貿易主義は完全自由化を妨げ、正確でタイムリーなデータ利用は制限されています。UnaBizとSORACOMが主導したスマートガスメーターの改造により、コストと時間のかかるネットワークの分解点検修理を行わなくても、データをリアルタイムで収集できます。このプロジェクトは、これまで行われてきたテクノロジーを活用したエネルギーの分野における問題解決で最も大規模な導入実績の1つです。
課題
ガスの使用管理においてコストに見合った方法で世界規模のデジタル化を行うこと。
解決策
最低10年間は使用できるように改良したスマート機能を携えたネットワーク制御装置。
成果
データの精度向上、運用コストの削減、サービスの向上、新たな収入源の確保。
日本瓦斯株式会社(ニチガス)
同社は液化石油ガス(LPG)、都市ガス、および電気を主に取り扱うエネルギー会社です。規制緩和が行われてから、同社は着実な成長を遂げ、国内で最も急成長しているLPG会社の1社です。
ニチガスは、質の高いサービスとその価格設定により、現在、関東地方、山梨県、および静岡県のお客様167万人以上にガスと電気を供給しています。
デジタル化
ニチガスは、市場の規制緩和が最終消費者と社会全体にもたらすメリットを強く支持し、新規参入企業に運用システムとコンプラインスに関するサービスを手頃な価格で提供するプラットフォームを開発したいと考えていました。
現在、同社のメーターはガス会社の担当者が毎月手動で検針しています。この方法はコストがかかるだけでなく、誤検針が発生しやすく、担当者に大きく依存しています。ニチガスがこれを変えるには、ガス消費データの収集をデジタル化する必要があります。
しかし、日本国内に6,200万台ある住宅用のスマート電気メーターとは異なり、5,000万台を超える住宅用LPGメーターと都市ガスメーターは現在オンライン化されていません。
実用的なイノベーション
ニチガスでは、目的に合わせてIoTハードウェアを製造できる企業であるUnaBizと、日本国内でIoT接続とデータ管理プラットフォームを提供している企業のSORACOMと提携する前に、有名な企業が提供している既製のソリューションや特注のソリューションをいくつか試験的に導入しました。しかしながら、いずれのソリューションも、同社が期待する投資収益率内で技術要件を満たしませんでした。
この問題に対処すべく、SORACOMはUnaBizと提携し、ガス消費量データを同社の中央IoTデータプラットフォーム「ニチガスストリーム」に送信するネットワーク制御装置(NCU)、「スペース蛍(ホタル)」を開発したのです。
これは日本の京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が運営するSigfoxの0G無線ネットワークを介して行われます。
当社では現在、3Gと4Gのネットワークで同様のサービスを提供しています。ですが、機能を最小限に絞った場合、実際に送信されるデータの量はわずかな量になります。このロジックが、Sigfox(シグフォックス)の低電力消費、小さいペイロード(データ量)、そして低価格での接続という明確な答えにつながったのです。
松田祐毅氏(ニチガス エネルギー事業本部 情報通信技術部 執行役員)
720倍
毎月収集されるデータの増加量
40%
スタッフ訪問の削減
1,000万円
手動検針から自動検針に変え削減できた額
50%削減
3G/4Gを基盤としたNCUと比較した総所有コスト
10年
バッテリー寿命
ニチガスが最初に発表したのは、基本的な機能を備えた未来型の「スペース蛍(ホタル)」を手書きしたものでした。UnaBiz台湾の研究開発・設計チームがその下絵から試作品の設計を開始しました。UnaBizは外装材から電子部品、通信プロトコルからファームウェアに至るまでのハードウェアソリューションの工業化とテストをわずか1年で実現しました。最終的なNCUは最初に作られた試作品の3分の1になり、UnaBizが保有する専門知識により、機械設計とファームウェア最適化に関してもバッテリー寿命が長くなっています。
スペース蛍は5分以内の設置が可能
大規模なプロジェクトを短期間で完了させるには、導入までのスピードが重要になります。スペース蛍は、結束バンドでガス管にすぐに固定できるように設計されています。滑らかで丸みのある形状によって結束は2分で、設置全体は5分以内に完了します。
SORACOMは、導入スタッフが現場固有のプロトコルアナライザーでNCUの通信成功率をテストできるアプリを使用し、NCUの導入をさらに促進しました。
現在ニチガスは、1日に数千台のメーターを導入しています。
「ニチガスのデジタル変革への取り組みにおいて、遠隔検針は初めの一歩にしか過ぎません。次に行うことは、エネルギー業界全体を巻き込んだ事業最適化を実現することです。」
ニチガス 取締役会長執行役員 和田眞治氏
次の段階:拡大
スペース蛍はすでに、ニチガスの競合企業や公共部門の注目を集めています。
同社社長によると、日本国内に2,400万台ある住宅用LPガスメーターと、水と電力の消費を管理する公益事業のインフラストラクチャにこのNCUを取り付けることができる可能性があります。
このソリューションは他ガス会社への再販も計画されているため、LTE-Mなどの異なる通信規格でもスペース蛍を開発しています。LTE-M版のスペース蛍であれば、30分以内にバルブのスイッチをオフにすることも可能になります。
ニチガスは、都市ガス利用者41万人に対してもスペース蛍を導入する予定です。スペース蛍によって、数年以内にニチガスに100万人を超える利用者のデータが集まるようになります。
「ほとんどの大規模IoTプロジェクトが直面してい課題がネットワークカバレッジです。物事の可能性を信じるIoTソリューションプロバイダーとして、私たちは各IoTテクノロジーの最高のものを活用し、お客様のビジネスおよび運用上の課題に対処します」とUnaBizのCEO兼共同創設者Henri Bongは言います。
他のガスプロバイダーへのソリューションの再販の計画があり、LTE-Mなどのさまざまな通信規格の下でスペース蛍を開発しました。
ニチガスの2番目となる接続ソースの計画へのサポートのためUnaBizはLTE-Mバージョンを開発し、価格競争力を維持しながらカバレッジを拡大しました。これは、スマート計測リーダーを日本の他のガス事業者に再販するためには必須なことです。
LTE-M接続は、IoTおよびM2M専用に設計された安全なマルチバンドSIMカード「ソラコムIoT SIM」を使用して提供され、Sigfox /セルラーの混合展開をサポートし、高度なクラウド機能へのアクセスを提供します。
「リモート検針は最初のステップに過ぎません。規制緩和され、より競争力のある日本のエネルギー市場を促進することがビジョンであり、それは顧客にとってのより良い価格とサービスにつながるでしょう」とニチガス 代表取締役社長執行役員 柏谷邦彦氏はコメントしました。
ニチガスは、LPガスの流通フローをオンラインにすることがコロナ後の社会に不可欠であると強く信じています。
LTE-Mスペース蛍の展開は2021年に開始されました。2024年10月現在、日本には170万台以上のスペースほたるが配備されています。